web版アニメ批評ドゥルガ

web版アニメ批評ドゥルガ

アニメに纏わる記事を書いています。毎月第四水曜日に更新。担当者が異なります。

ゲームを、また始めるために——アニメ『NEW GAME!』

中澤一棋 「ぞい」、あるいは生きるための「茶化し」 桜の舞う町を小川が流れる。少女の横顔が見切れ、画面いっぱいに長い青髪が風になびく。二人の女子高生が歩いていく。再び桜の下を川が流れていく。桜に透かされて女子高生は歩く。青い髪の少女と思しき…

トーキーアニメ黎明期『懐かしいケンタッキーホーム』と私見

どうしてアニメーションが好きかと聞かれればなんと答えますか? 三次元的な制約を超えた自由な動きを求めてと言ってみてもCGを取り入れていない実写映画なんてもはや少ないくらいですし、それ以前にもクレーン撮影などによって重力を欠いたようなシーンは撮…

噛みすぎてはいけない――『リズと青い鳥』について

誰が言い出したのか、いつからかオーボエは「世界一難しい楽器」として金管楽器のホルンと並んでギネスに登録されてしまいました。この説は昔吹奏楽部でオーボエを吹いていた経験がある人間としてもいまいちしっくりこないどころか、個人的には申告した人間…

ネタバレ有り感想。岡田麿里『さよならの朝に約束の花をかざろう』

この記事は岡田麿里が脚本・監督をした作品のネタバレを含んでいます。 ユリイカ 2018年3月臨時増刊号 総特集◎岡田麿里 -『true tears』から『とらドラ! 』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』…そして『さよならの朝…

「言葉の意味」の意味:なぜ外国語(なんか)をやるのか―『きんいろモザイク』#1から

自分がそのなかで生まれ育った言語、すなわち母語(≠母国語)があれば、それ以外の他者の言語(一般的に外国語と呼ばれますが、外国に存在する言語だけが母語と異なる言語であるとは言えません)も存在します。そのようなもともと自分のものではない(なかっ…

『アマガミ』の思い出

『アマガミ』のネタバレ注意! 新年ですね。おめでたいです。そんなことより、Amazonプライムで『アマガミSS』と、『アマガミSS plus』が観られるようになっていて、とんでもなくめでたい、幸せな気分です。元アマガミスト(PSPが壊れた)の私としては、もう…

声だけの聖地巡礼―後藤明生「ピラミッドトーク」で幕張を歩く

椅子に座る仕事が連日続いていたのでそろそろ遠出したいと思っていたのですが、最近後藤明生の「ピラミッドトーク」を合評する機会があってちょっと歩いてみたいなと思ったので出かけることにしました。 首塚の上のアドバルーン (講談社文芸文庫) 作者: 後藤…

天空から宇宙へ

私たちが空を仰ぎ見るとき、その向こう側に神話の世界が広がっているとは考えないのかも知れない。いくら向こう側に「未知の物質」や「UFO」があるのだと言ってみたところで、それを言わしめる想像力は私たちの足元から地続きで繋がっている。もはや「空」と…

「新海誠展」雑感

先日は文フリお疲れ様でした。ドゥルガ2号をお買い上げくださった方、誠にありがとうございます。 今後も毎週水曜日のブログ更新、またドゥルガ3号発行に向けての準備を行っていきますので、なにとぞよろしくお願いいたします。 さて、ひと段落ついたこと…

11月23日文学フリマ東京出店のお知らせ

明日の11月23日の文学フリマ東京にて、ドゥルガは第二号となる冊子を頒布します。価格は恐らく二百円。場所は『二人称・彷徨・東京』という冊子を頒布予定のサークルPABULUMと同じB‐49です。詳しい情報は明日の朝、Twitterでお知らせいたします。今回は「魔…

ある演出的到達点としての映画『聲の形』

先日、『心が叫びたがってるんだ。』に引き続いて映画『聲の形』の勉強会を行いました。 koenokatachi-movie.com 作中には花や植物がちりばめられています。しかもかなりの種類にのぼり、それぞれアップで映されたりするのです。名前を確認できたものだけで…

玉子と王子・声と文字の『心が叫びたがってるんだ。』

『心が叫びたがってるんだ。』のネタバレ注意! 先日、三回目の勉強会を行いました。 A-1 Pictures制作 超平和バスターズ原作の『心が叫びたがってるんだ。』を一緒に見ていきました。 わたしがレジュメをつくったのですが、話すことを念頭においていたので…

秋文フリ記事紹介に代えて――ミシェル・フーコー『これはパイプではない』を読む

黒板に書きつけられた「これはパイプではない(Ceci n’est pas une pipe)」という文はどこに向けられているのだろう。同じく黒板に描かれたパイプに向けたものなのか、あるいは黒板の上方に浮かんでいるようにみえる大きなパイプに向けたものなのだろうか。…

吹奏楽曲を紹介しながら『響け!ユーフォニアム』について語る

きのうドゥルガのサークル員と一緒に『劇場版 響け!ユーフォニアム~届けたいメロディ~』を観てきました。 anime-eupho.com 「届けたい」というフレーズはたとえばJポップの歌詞などでよく見られますけれど、『きみの声をとどけたい』などもありましたし…

『ラブライブ!サンシャイン!!』第二期、第一話を見て

ラブライブ! サンシャイン!! 2nd Season Blu-ray 1 (特装限定版) アーティスト: ラブライブ! 出版社/メーカー: バンダイビジュアル 発売日: 2017/12/22 メディア: Blu-ray この商品を含むブログを見る 『ラブライブ!サンシャイン!!』の二期が放送開始とな…

眼球=視線の導き――長井龍雪『とらドラ!』第一OP

よく言われる事、キャラクターにとってよく口にされることは、このようなものです。 こんな人間いる訳ない。身体は小さくてやたらと頭は大きいし、長すぎる足は栄養失調みたいに細いし、髪の色がピンク、青、緑で、それで優等生や地味な性格なんて成り立つわ…

平面をめくる、めく―石浜真史のOP映像

すこしまえ、『かみちゅ!』を見ていてOP映像の手法になんだか見覚えがあるなと思ったら、コンテ・演出が石浜真史さんでした。 かみちゅ! Blu-ray BOX 出版社/メーカー: アニプレックス 発売日: 2010/06/02 メディア: Blu-ray 購入: 12人 クリック: 226回 こ…

アニメオリジナル〔日常〕から劇場版〔非日常〕へ 涼宮ハルヒの憂鬱『サムデイ イン ザ レイン』について

その日も寒い一日であったのだろうが、「地球をアイスピックでつついたとしたら、ちょうどいい感じにカチ割れるんじゃないかというくらい冷え切って」いるような印象もなく、明日が来てしまえばどのような日であったかも思い出せないような何気ない一日であ…

ネオ・ヴェネツィアの想像力――『ARIA』聖地巡礼

以下批評とあんまり関係ない文章になるので恐縮ですが、ヴェネツィアに行ってまいりました。 ご存知の方も多いと思いますが、ヴェネツィアはさまざまな創作物の舞台ともなっていて、アニメファンには『ARIA』の舞台「ネオ・ヴェネツィア」のモデルとしても知…

何故「ファンタジーなんて描けない」のか――認識と一貫性に関する一考察

「高度に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない」というアーサー・C・クラークの有名な文言がある。本人がどのような文脈でこれを述べたかは知らないが、この言葉からは発展に従って人類の手から離れてゆこうとする科学技術に対する戸惑いのようなものを…

あまりに主題論的な『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』

(引用元:https://www.fashion-press.net/news/27685) 公式サイト:www.uchiagehanabi.jp 原作:岩井俊二 総監督:新房昭之 監督、絵コンテ、キーレイアウト、美術設定:武内宣之 制作会社:シャフト 『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(以…

ボクサーとしての属性 

矢吹丈というボクサーの属性は、「ケンカ」や「野生児」といったような、既成のボクサーのスタイルを異化し、彼が正統から外れた存在であることを表すようなものを付与されています。それは、ジョーがボクシングを始めるに至った経緯や、彼の並外れた才能を…

「明日の入り口」に残されたのは――『けいおん!』をめぐって(5・終)

時間という概念がきわめて重要なプルースト『失われた時を求めて』では頻繁に文章の上にあらわれる細部がいくつもあるのですが、そのなかの代表的なものとして「窓」と「光」があります。窓はある隔たりを保ちながら外界を見るためのものであり、またプルー…

流れていく現在のただなかで――『けいおん!』をめぐって(4)

時計を見慣れた我々にとって、時間というものに循環性があることはすぐに了解されると思います。長針が一周することで一時間が経ち、短針が二周することで一日が経過します。あるいは太陽が昇っては沈むことで一日が経ち、一週間、一ヶ月と経っていって、春…

円形を見つめるあずにゃん――『けいおん!』をめぐって(3)

二期13話「残暑見舞い!」でも、梓は夢を見ます。 (二期13話の紹介ページ↓) www.tbs.co.jp 夏休み、三年生四人が勉強で忙しくしているなか、梓は暇を持て余していました。夏の熱に浮かされたように梓は憂や二人の同級生の純と遊びに出掛けた先でも居眠りを…

逆の物語としての「解散ごっこ」――『けいおん!』をめぐって(2)

『映画けいおん!』をめぐる議論のなかで(それはもちろんTVシリーズにも波及しますが)、重要だと思われることがらの一つとして「模倣」が挙げられました。 冒頭、前回言及した唯が目覚める場面のあと、シーンは三年生四人が音楽室で(彼女たちらしくもな…

細部の連関、写真と目覚めという契機――『けいおん!』をめぐって(1)

昨日、ドゥルガとしては初の勉強会を行いまして、いろいろと議論することができました。 扱ったのは『映画けいおん!』(2011)です。 映画 けいおん! (Blu-ray 初回限定版) 出版社/メーカー: ポニーキャニオン 発売日: 2012/07/18 メディア: Blu-ray 購入: …

「最強」の条件――『グラップラー刃牙シリーズ』について

1 「最強の格闘技」とは何か、と問われて一体何を思い浮かべるでしょうか。恐らく各々様々な競技を思い浮かべるのでしょうし、格闘技を実際にやっているとなれば、いささかの自負と共に、自分やっている競技がそうだ、と答えるのかも知れません。 しかし、…

日常系のなかの人間関係

前回の担当者が書いた記事の追補あるいは応答としていろいろ書いてみたいと思います。(前回記事はこちら↓) durga1907.hatenablog.com お仕事アニメと呼ばれる作品はたくさんあります。日常系との関連で言えば、たとえば現在2期が放送中の『NEW GAME!』は…

秋文フリと日常系について

水曜日の定期更新を始めて九週目になります。 このブログはアニメ批評同人誌ドゥルガという零細サークルのweb版で、今回は私たちの本誌二号の話と日常系アニメについて書きます。 前回の『ドゥルガ』は製本をしていないフリーペーパーでしたが、今回はきちん…