web版アニメ批評ドゥルガ

日常系のなかの人間関係

前回の担当者が書いた記事の追補あるいは応答としていろいろ書いてみたいと思います。(前回記事はこちら↓)

durga1907.hatenablog.com

 

お仕事アニメと呼ばれる作品はたくさんあります。日常系との関連で言えば、たとえば現在2期が放送中の『NEW GAME!』はゲーム制作会社の日常を描いた作品ですね。

newgame-anime.com

WORKING!!』はファミレスのアルバイト同士の物語でしたが、こちらは専門性の高い業務を社員として人物達が行う様子が描かれており、主人公の青葉は会社や先輩社員に憧れをもって入社し、また青葉や若手社員がそれぞれの得意とする分野の業務の技術を磨いていくことでその代替不可能性を維持しています。芸術的なニュアンスを含むものの場合、物語中でそれぞれのキャラクターに固有性を付与するのはおそらく難しくはないでしょう。当然これは部活ものの『けいおん!』などでもあてはまることです。放課後ティータイムのメンバーは替えはきかない(少なくとも作中人物たちにとってそれがまずありえない選択肢であることを視聴者も自ずから了解する)でしょう。

もっとも、彼女たちにおいて、というよりほとんどの女性キャラクターしか登場しない日常系作品の人物たちにおいては、友情が主要登場人物相互に代替不可能性を担保しているということがほとんど前提としてあるので、いま述べた能力による固有性は補足的なものと言ってよいかもしれません。その友情が崩壊しないことが日常系の平和な所以であり、物語性の薄い要因である(人物の人間関係が決定的な変化を起こさないゆえに物語の変化に乏しい)といえるでしょう。『WORKING!!』のように男女のキャラクターがいる作品においては、友情に加え恋愛要素が盛り込まれ、ラブコメ的様相を帯びることも多くあります。

ところで、女性キャラだけの空間が友情に満ちているのにそこに恋愛要素を投入し、人間関係の間の網目を濃く煮詰め、しかしその関係がまったく変化しないという、こう書くと日常系のひとつの極点とも思えてしまうような作品が『ゆるゆり』です。

yuruyuri.com

(上のリンクからキャラクターの相関図を確認できます)

友情と恋愛、あるいはどちらともいえないような好意、またはクラスメイトといった環境による関係がほとんどの人物同士の間にあることによって、どのキャラ同士で場面を構成しても面白く会話を作ることに成功していると思います(これはたくさんエピソードを作ろうとするときには大きな強みです)。ただし、恋愛関係において主要キャラとの関係がないことで人間関係の網目の比較的薄いところに立っている赤座あかりは、たとえば歳納京子のような強烈な個性をもっていないことも相まって頻繁に空気になります。主人公なのに……。

ほかの日常系作品でも、いわゆる百合要素のある作品はたくさんあります。『桜Trick』(来月で原作が終わってしまうらしいですね)はいちばん過激な例だとは思いますが、もっと微妙な感情まで拡張すると、『きんいろモザイク』の綾から陽子への「特別な感情」(公式がこのような言い方をしたことがあります)、あるいは『ご注文はうさぎですか?』のシャロからリゼへの、『Aチャンネル』のトオルからるんへの感情なども含まれてくるかもしれません。恋愛かどうかということはともかく、あるキャラが誰か特定のキャラに対して強い感情を抱くということは日常系の中の関係でときどき起こります。そのとき重要なのが、感情を向けられている相手は必ずしも感情を向ける側「だけ」を見ているわけではなく(つまり片思い的)、したがって往々にして感情を向ける側が自分の代替可能性への不安にさらされることになるということです。その宙づり状態が変化するわけでもなく継続することによって(不安とその解消という狭い振幅をもった変化がくりかえされることによって)、展開がなくても物語の流れが成立している、というのが恋愛(あるいは百合)要素のからんだ日常系のひとつの本質ではないでしょうか。

ただし、あくまでその関係には変化・進展がない(前回担当者の言う「関係を進めない関係」)ので、成就や破局までを描きその間の関係の変化・進展を楽しむ恋愛ものとは一線を画します。そこが、日常系作品に百合要素があっても真に恋愛的な意味での百合は存在しにくい所以だと思われます。百合に関してはサークル員にもっと詳しい者がいるのでいつか記事を書いてくれるかもしれません。

もうひとつ、もとの論点に立ち返って付け加えるならば、人物の代替可能性に対する危機が展開のない物語の推進力になっている作品もある一方、それは必ずしも絶対に必要な条件ではないようにも思われます。代替可能性が人物の心情に変化を及ぼすことで物語の起伏ができあがる一方、四季の変化、学年や年齢の変化、ある目標までの進捗状況の変化といった外的な変化によっても物語の起伏は作られうるからです。

 

ここまでだいぶ書いたんですが、まだもうちょっと述べたいことがあるので(内容は別の話です)、次回の担当回に書くか定期更新以外の機会に投下するかしたいと思います。

 

(補足)

片思い状態が解消せずに継続するのがかなり凝った構図で展開されている作品として『この美術部には問題がある!』があげられますが、こちらの作品はデータ無料配布中の『ドゥルガ』一号にて当サークル員が論考を執筆しましたので、よろしければご覧になってください。以上の話と関連する箇所もあるかもしれません。

ux.getuploader.com

 

(奈)